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【ブログ】品種茶の代表格・「やぶきた」のおはなし
こんにちは。網代園のあさみです。
前回のブログで取り上げた「茶の品種」というテーマに
思いがけない反響をいただきました。
せっかくですので、今月はやぶきたという品種に絞り
その歴史や特長をおはなししてみたいと思います。
「お茶の品種ってなに?」という方は
下記ブログをご参照ください。
http://www.ajiroen.jp/blog/1740/
やぶきたってどんな品種?

やぶきたは、日本茶の品種のひとつ。
1945(昭和20)年に静岡県の奨励品種に指定、
1953(昭和28)年には、農林水産省に品種登録されました。
品質が優良で収量も多く、安定した生産が見込めることから
現在も、全国で7割以上のシェアを誇るやぶきた。
中でも静岡県内では、栽培面積の9割以上を占め
品種選定された当時の原樹が、静岡市に残されています。
品種茶はどうやって生まれたの?

そもそも、やぶきたをはじめとした品種栽培は
どのようにして始まったのでしょうか。
明治時代以降、日本茶は生糸に次ぐ重要な輸出品目として
注目され、本格的な茶生産が始まります。
当時はまだ品種という概念がなく
各地に自生した茶の樹を種から育てる実生法が一般的でした。
しかし、茶の樹には自家不和合性といって
種から育てると雑種になってしまう性質があります。
つまり、ひとつの畑にさまざまな品種が植わっている状態で
味の優劣や生育速度も、樹によってバラバラでした。
その後、同じ特徴をもつ樹を増やすために
挿し木(質の良い樹の枝を切り取り、土に挿して発根させる)
による繁殖・栽培手法が定着していきます。
今では、95%以上が品種化した茶園で育てられていますが
こうした茶園が増え始めたのは昭和30年代後半ごろから。
これよりはるか前に、品種ごとの特性を見出し
現代に受け継がれる優良品種「やぶきた」を発見したのが
杉山彦三郎という人物です。
杉山彦三郎ってどんな人?

1857(安政4)年に静岡県で生まれた杉山氏。
実家は代々続く医者の家系でしたが、学問が嫌いだったこともあり
自身は農業に注力しました。
ほぼ独学で茶の栽培に取り組むうち、
摘採時期や収量・品質といった樹ごとの個体差に気づき
質の高い茶を追い求めて、全国各地へ視察に訪れました。
他人の畑も構わずうろつき、茶の葉を齧って回ったため
「イタチ」と陰口を叩かれることもあったとか。
そして、所有していた竹藪を開拓しつくった茶園の中に
特に優良な品質をもつ茶の樹を発見します。
藪の北側に植えられたその樹は「やぶきた」と名付けられ
戦後、全国へと普及していきました。
まとめ

杉山氏の尽力がなければ、茶の品種改良という取り組みは
もっと遅れていたのかもしれません。
先人たちが築いた歴史に感謝しながら
これからも日本茶を味わっていきたいと思います。
皆さま、すてきな “ お茶時間 “ を。