お知らせ・店主ブログ

【ブログ】お茶屋が伝えたい急須のおはなし(その3)

こんにちは。八王子の日本茶専門店・網代園です。

2月の恒例となってまいりました、急須のおはなし。

今回は、急須の産地をまとめてみました。
ご笑覧ください。

 

 

常滑焼(とこなめやき)

赤色の急須を代表とする常滑焼(とこなめやき)は、
愛知県常滑市(とこなめし)を中心につくられている焼き物。

はじまりは平安時代末期といわれており
越前・瀬戸・信楽・丹波・備前と並び
中世~現代まで生産が続く代表的な産地、
日本六古窯(ろっこよう)のひとつでもあります。

常滑急須特有のやわらかな赤色は、
知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土
朱泥(しゅでい)を原料としていることが由来だとか。

古くは壼や甕(かめ)など、大きな焼き物の製造が多かったようですが
江戸後期以降、急須を使って淹れる煎茶が流行し始めると
「土に含まれる鉄分がお茶の渋みを和らげてくれる」と話題に。
今では、急須の生産量全国一といわれています。

現地のやきもの散歩道には、土管や焼酎瓶を並べた土管坂
昭和時代まで使われていた登窯(のぼりがま)などが今でも残っており
焼き物の町らしい風情を楽しむことができます。

 

 

萬古焼(ばんこやき)

三重県四日市市(よっかいちし)と菰野町(こものちょう)周辺は
300年ほど前に誕生した萬古焼(ばんこやき)の名産地です。

創始者は、江戸時代の陶芸家・沼波弄山(ぬなみ ろうざん)。
実家は「萬古屋」という陶器の廻船問屋で、
幼い頃から茶道や陶芸に触れ、自ら窯を開きました。

萬古焼の定番といえば、紫泥(しでい)急須。
常滑と同じく、鉄分の多い赤土が使われています。
小豆色にも似た、深みのある独特の色合いで
使い込むほどに光沢が増していくのも魅力のひとつ。

また、陶土と磁土を組み合わせた半磁器の技術開発によって
明治以降、耐久性・耐熱性に優れた商品の生産が拡大し
中でも土鍋は、現在国内シェア8~9割を占めているそうです。

三重県は伊勢茶の栽培も盛んであり、
特に四日市市水沢(すいざわ)には、美しい緑の茶畑が広がります。
伊勢茶と萬古急須の組み合わせは、お茶好きなら一度は試してみたいですね。

  

 

有田焼(ありたやき)

近年、海外へのお土産としても人気の有田焼(ありたやき)は、
佐賀県有田町(ありたちょう)を拠点に製造されています。

常滑焼・萬古焼が陶器や半磁器製であるのに対し
有田焼は、日本で最初につくられた磁器の焼き物。
17世紀初頭、有田町の泉山(いずみやま)で
磁器の原料である陶石が発見されたことをきっかけに
佐賀藩によって本格的な産業化が進みました。

特徴は、なめらかな白い磁肌(白磁)を生かした
呉須(ごす)と呼ばれる藍色の染め付けや、
赤色を基調に彩色した赤絵付け(あかえつけ)など。

また、旅館などでよく見かける水玉柄の急須(土瓶)は
有田町の近隣地域・嬉野市吉田地区などで発展した
肥前吉田焼(ひぜんよしだやき)の代表作品なんだそうです。

有田町にある陶山神社(すえやまじんじゃ)は
鳥居・狛犬・門柱のほか、お守りまで磁器でつくられているとか。
特に、2020年に修繕を終えた淡い唐草模様の磁器製鳥居は圧巻です。

 

 

まとめ

急須の産地を調べたり、画像を見ているうちに
実際に現地へ赴きたくなってしまいました。

もし現地をご存じの方、お出かけなさった方がいらっしゃいましたら
ぜひお話を聞かせてくださいませ。

それでは皆さま、すてきなお茶時間を。