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麦茶の文化-暮らしと歩んだ歴史のハナシ

明治24年創業、八王子のお茶屋・網代園(あじろえん)です。
日本の夏を彩る定番ドリンク、麦茶。
子どもから大人まで、安心して楽しめるその味わいは
古くから多くの家庭で愛され続けています。
この記事では、そんな麦茶の歴史をたどりながら
時代とともに変わってきた飲み方や役割をご紹介します。
麦茶のおいしい入れ方が気になる方は
下記の関連記事をご参照ください。
関連記事:夏の水分補給に欠かせない麦茶のおはなし
-目次-
1.麦茶の起源は?
・ 平安~江戸時代:麦茶のはじまり
・ 夏の風物詩〈 麦湯 〉
2. 麦茶はどのように広まったの?
・ 明治~昭和時代:家庭の定番ドリンクに
・ 風味豊かな〈 丸粒麦茶 〉
3. 麦茶はどんな人にぴったり?
・ 平成以降~:広がる麦茶の世界
・ 急増中の〈 トクホ麦茶飲料 〉
4. 終わりに
1.麦茶の起源は?

まずは、麦茶のはじまりをさかのぼってみましょう。
〈 麦茶の歴史:平安~江戸時代 〉
麦茶の原料・大麦が日本に伝わったのは、縄文時代。
生のままでは食べられないため
炒った麦を水へ浸してから食すのが慣習で
このつけ水を飲むことも多かったのだとか。
平安時代初期、
「炒った麦を粉にした後、湯水で溶いて飲む」
という記録が当時の文献に残っており
これが麦茶の原型ではないかと考えられています。
室町時代までは、主に貴族の飲み物だったようですが
戦国時代以降は、武将たちにも愛飲されました。
日本茶の原料であるチャノキ(茶の木)の伝来が鎌倉時代ですから
それより古い歴史をもっているなんて、ちょっと意外ですね。
〈 麦湯 〉
江戸時代に入り、私たちの知る日本茶(煎茶)が登場しますが
まだまだ高級品で、庶民にはとても手が届きません。
冷たい飲み物が一般的ではなかったこの時代、
代わりに、温かい麦湯(むぎゆ)が広く親しまれました。
夕方になると、江戸の町には麦湯売りの夜店が立ち並び
若い女性が遅くまで給仕をしたそうです。
あまり知られていませんが、当時の浮世絵にも
市中の風景として、たびたび描かれているんですよ。
保存技術が発達していなかった当時の麦湯は
その時期にしか味わえない、旬の飲み物だったはず。
5~6月に収穫したばかりの麦を使った一杯は
夏の日に、格別のおいしさだったことでしょう。
関連記事:お茶の原料・チャノキ(茶の木)のおはなし
2.麦茶はどのように広まったの?

さて、麦茶が家庭の定番になるのは、いつごろのはなしなのでしょうか。
〈 麦茶の歴史:明治~昭和時代 〉
明治時代を迎えると、西洋風のカフェや喫茶店が台頭。
町中にあった麦湯屋は少しずつ姿を消していきます。
そのいっぽうで、「家で麦茶をつくる」という習慣が
だんだんと広がりはじめました。
明治のはじめごろは、上水道が整備されていない地域も多く
「水は沸かしてから飲む」のが当たり前の時代。
人々は自家栽培したり、店で買った炒り麦を煮出して麦茶をつくり
それはやがて、日本の夏に欠かせない飲み物となりました。
香ばしい風味を楽しむ飲み物であると同時に、
麦茶は、安心して暮らすための生活の知恵でもあったんですね。
〈 粒麦茶 〉
昭和期後半、家庭用冷蔵庫が普及し
冷たい飲み物が身近な存在となりました。
煮出したあとに冷やして飲む、今の形の麦茶が
一般家庭で広く親しまれるようになっていきます。
当時主流だったのは、丸粒麦茶。
大麦を砕かず、そのまま焙煎したもので
香ばしさとコク深い味わいが特長です。
大きな麦を時間をかけて煮出すのは、確かに手間がかかるのですが
しっかり香りが引き立つので、冷やしても風味を損ないません。
大きなヤカンでぐつぐつと煮出し、
氷の張ったタライで冷まし、ポットへ移して冷蔵庫へ。
そんな風景が、夏の暮らしの定番となりました。
こうして麦茶は、家族の健康を支える日常のお茶として
暮らしに深く根付いていくのです。
3.冷麦茶はどんな人にぴったり?

最後に、現代の麦茶事情を少しのぞいてみましょう。
〈 麦茶の歴史:平成以降~ 〉
皆さまご存じのとおり、平成以降はさまざまな麦茶製品が登場しています。
水出しに適したティーバッグは
早く抽出できるように、麦を砕いた砕粒タイプが多く
あっさりした口当たりで飲みやすいのも嬉しいポイント。
このほか、溶かして飲める粉末タイプやペットボトル飲料など
現代のライフスタイルに合わせて、便利な商品が増えています。
ノンカフェインで、ミネラルも豊富なので
この夏の水分補給でも、大活躍してくれることでしょう。
〈 トクホ麦茶飲料 〉
ペットボトルでよく見かける緑茶のトクホ(特定保健用食品)ですが
麦茶系のトクホ飲料も、ここ数年広まりつつあります。
血圧を下げたり、脂肪の吸収を抑えたりと、嬉しい効果が期待できるのですが
注意したいのは、これらの機能性成分は麦自体のものではなく
あとから添加されている、という点。
では、なぜ麦茶味にするのかというと
麦茶がそれだけ、日本人に親しまれている味ということなのだと思います。
クセがないので毎日続けやすく、食事にも合わせやすそうです。
気になる方は、日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
関連記事:ティーバッグの歴史と魅力-手軽でおいしいお茶の淹れ方・選び方のススメ
4.終わりに

長い歴史を経て、麦茶は今も変わらず
私たちの生活に寄り添っています。
今年の夏もきっと、あなたの心と体をやさしく潤してくれますよ。
皆さまが健やかで、穏やかな夏を過ごされますよう
心からお祈りいたしております。
コラムでは、皆さまからのささいな疑問や
テーマのリクエストを受け付けております。
お茶に関するご質問・ご相談などがありましたら
メールフォームや下記のLINEリンクから、気軽にお寄せくださいませ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
ステキなお茶時間をお過ごしください。