お知らせ・店主ブログ
【ブログ】茶の湯の歴史と文化のおはなし
こんにちは。八王子の日本茶専門店・網代園です。
11月は抹茶の旬、ということで
抹茶に関するブログを投稿したのがちょうど1年前。
身近なようで意外と知らない、抹茶のおはなし
今年は、このお抹茶と深い結びつきをもつ
茶の湯(茶道)の歴史と文化を振り返ってみたいと思います。
かつて茶の湯はギャンブルだった?
![](https://www.ajiroen.jp/wp-content/uploads/2023/11/27331584_s.jpg)
茶の湯といえばわびさび(質素で物静かな美意識)
というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、
南北朝~室町時代にかけての茶の湯文化は
今とは少々趣向が異なったようです。
茶が国内で栽培され始めるこのころ、
当然ながら、産地間で品質に大きな差がありました。
そこで、歴史的な由緒をもつ京都・栂尾(とがのお)産の茶を本茶(ほんちゃ)
それ以外の産地の茶を非茶(ひちゃ)とし、
双方を飲み当てる闘茶というゲームが、賭け事として好まれるように。
【ブログ】日本茶でゲーム?伝統文化・茶歌舞伎(ちゃかぶき)のおはなし
また、こうした交流の場には、唐物(からもの)・唐絵(からえ)といった
中国渡来の高価な茶器や絵画が飾られ、その豪華さまで競い合いました。
華美で娯楽性の高いものだった茶の湯が、
どのように移り変わっていくのでしょうか。
茶の湯を確立するのはどんな人物?
![](https://www.ajiroen.jp/wp-content/uploads/2023/11/24933380_s.jpg)
村田珠光(むらた じゅこう または しゅこう)は
現代の侘び茶(わびちゃ)の祖といわれる人物です。
室町幕府8代将軍・足利義政の茶道師範を務めるとともに
とんちでおなじみの僧・一休宗純(いっきゅう そうじゅん)と交流し
ここで学んだ禅の思想を、茶の湯に取り入れました。
それまで主流だった書院の茶(広間で行う華やかな茶会)から
4畳半の質素な和室において、少人数で茶を喫する形を見出し
互いの精神的なつながりを重視するようになります。
この流れを継ぎ、侘び茶を発展させたのが
大阪・堺の商人であった武野紹鴎(たけの じょうおう)。
珠光の孫弟子にあたる紹鴎は、
得意としていた和歌の心を茶の湯に活かします。
唐物から信楽・備前といった和風の茶器へあらためたり、
4畳半より更に小さい3畳半・2畳半の茶室を考案するなど
創意工夫により、新たな茶の湯の形を生み出しました。
彼が輩出した多くの茶人の中でも、最も有名なのは
やはり千利休(せんのりきゅう)でしょう。
無駄なものを極限までそぎ落とす「侘びの美」を突き詰め
ろくろを使わず手捏ね(てづくね)で成形する楽茶碗
国宝に指定されているわずか2畳の茶室・待庵など
彼独自のプロデュース作品を数多く残しました。
こうして茶の湯は、単に喫茶を目的とするものではなく
精神的な学び・追求を目指す道 = 茶道として成長を遂げ
今でも継承され続けています。
茶の湯(茶道)において大切な心構えとは?
![](https://www.ajiroen.jp/wp-content/uploads/2023/11/25730033_s.jpg)
最後に、利休が説いた四規七則(しきしちそく)をご紹介します。
四規とは、和敬清寂(わけいせいじゃく)の精神を指し
利休の茶道に対する考えを端的に表したもの。
和 … 互いに和を重んじること(仲良くすること)
敬 … 人や自然、あらゆる万物に感謝し、敬うこと
清 … 道具や心身を清らかにすること
寂 … 静かで、何事にも動じないこと
七則(利休七則とも)も、茶人の心得を説くもので
利休が弟子から茶の極意を問われた際に
答えた内容が元になったといわれています。
茶は服のよきように点て (飲む人にとってちょうど良い加減の茶を用意する)
炭は湯の沸くように置き (見栄えだけでなく、要点を見極める)
夏は涼しく冬は温かに (その瞬間を心地よく過ごせるよう、季節感を演出する)
花は野にあるように (むやみに飾り立てず、自然のままの姿を大切にする)
刻限は早めに (時を大切に、心に余裕をもって茶会に臨む)
降らずとも雨の用意 (何事も臨機応変に対応できるよう、準備を怠らない)
相客に心せよ (亭主と客だけでなく、客同士の心配りも忘れない)
まとめ
![](https://www.ajiroen.jp/wp-content/uploads/2023/11/27524409_s.jpg)
どうしても敷居が高い、堅苦しいという印象をもたれがちですが、
茶の湯(茶道)の精神は、日常生活や仕事の中で活かせるものが多くあります。
少しでも関心をもっていただけたら、嬉しい限りです。
それでは皆さま、すてきなお茶時間を。