お知らせ・コラム
新茶と古茶-今しか味わえない旬のハナシ

明治24年創業、八王子のお茶屋・網代園(あじろえん)です。
いよいよ新茶のシーズンが到来。
近ごろは天候が不安定で心配していましたが
今年も無事この季節を迎えられたことに、ほっとしています。
本記事では、新茶の購入を検討されている方や
旬ならではの味わいをもっと満喫したい方へ向けて
季節を楽しむヒントをお届けできたらと思っています。
-目次-
1.新茶ってどんなお茶?
・ 栄養たっぷり〈 新茶 〉 の魅力
・ 新茶の〈 販売時期 〉
2. 古くなったお茶はおいしくない?
・ お茶好きが愛する〈 古茶 〉 の魅力
・ 一年中おいしく飲むための〈 保存技術 〉
3. 新茶のおいしい淹れ方・飲み方は?
・ 高めの湯温で〈 香りを引き出す 〉
・ 低めの湯温で〈 甘みを引き出す 〉
・ 新茶の 〈 保存方法と期間 〉
4. 終わりに
1.新茶ってどんなお茶?

新茶(しんちゃ)とは、その年のはじめに摘んだ新芽でつくるお茶のこと。
一番茶(いちばんちゃ)とも呼ばれています。
〈 新茶 〉
お茶の木は、冬のあいだじっと養分を蓄え、春になると一斉に芽吹きます。
新芽には、うまみ成分・テアニンなどの栄養素が豊富に含まれており
「新茶を飲むと一年無病息災で過ごせる」という言い伝えがあるほど。
ご自宅用はもちろん、母の日やゴールデンウィークの手土産など
縁起のよい贈り物としても、人気の商品です。
育った産地や品種によって特色は異なりますが
青葉の力強い香り、新鮮でみずみずしい味わいなどが魅力です。
〈 販売時期 〉
新茶の収穫は、九州など温暖な地域から始まり
桜前線と同じように、徐々に北上していきます。
日本の童謡 『茶つみ』に
♪ 夏も近づく八十八夜 ~ という歌詞がありますね。
八十八夜は、立春から数えて88日目(毎年5月2日ごろ)のこと。
春から夏へ移り変わる 4月中旬~5月中旬 ごろが
新茶のシーズンといえるでしょう。
ただ、気候変動の影響で、今後収穫時期が前後する可能性もあります。
入荷のタイミングにより、店頭価格なども異なってきますので
迷ったときは、遠慮なくお店のスタッフに相談してみてください。
関連記事:日本茶の栄養素と健康効果のおはなし
2.古くなったお茶はおいしくない?

新茶に対し、前年に収穫されたお茶のことを
古茶(こちゃ)、ひね茶と呼ぶことがあります。
「古いお茶は、鮮度が落ちておいしくないのでは?」
「新茶が出たし、古いものは処分した方がいい?」
と疑問を抱く方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
古茶って、実はとってもおいしいんです。
〈 古茶 〉
著名な茶人である千利休や、徳川将軍家も
新茶を味わったのは、秋になってから。
新茶は、ひと夏保存することで旨みが増すといわれており
かの家康公も、宇治で採れた新茶をすぐには飲まず
お茶蔵のなかで大切に保存させていたそうです。
青々としたフレッシュなインパクトは、新茶ならではの魅力ですが
「胃腸に刺激を感じる」というお声を耳にすることも。
「穏やかで安定した味わいが好み」と
新茶シーズンに、あえて古茶を選ぶ方もいらっしゃるんですよ。
〈 保存技術 〉
日本茶は、含水率3~5%程度で管理されており
ほかの乾燥食品と同様、比較的日持ちしやすい品目です。
工場で製茶された葉は、吸湿や移り香が起こらないよう
細心の注意を払いつつ、茶専用の冷蔵庫で低温貯蔵。
さらに、茶袋へ小分け封入する際も
窒素ガス置換・真空包装といった技術を利用し
茶の変質(酸化)を防ぎ、鮮度を保つ工夫が施されています。
こうした保存技術のおかげで、
私たちはいつでも、新鮮なお茶を飲むことができるんですね。
新茶・古茶の違いは、単純な優劣を表すものではありません。
それぞれの個性を理解し、シーンや気分に合わせて選べば
お茶の世界は、さらに広がっていくはずです。
3.新茶のおいしい淹れ方・飲み方は?

最後に、新茶の特色を引き出す淹れ方・飲み方をご紹介します。
〈 香りを引き出す 〉
新茶のフレッシュな香りを最大限引き出すには
お湯の温度がポイントです。
おすすめは、80℃前後のやや高めの温度。
摘みたての爽快な香りが、ふわっと立ち上がります。
お茶の香り成分には、ストレスを軽減させたり
不安を和らげる効果があるといわれています。
季節の変わり目で、体調を崩しやすいこの時期
新茶で心身をととのえてみてはいかがでしょうか。
〈 甘みを引き立す 〉
冬のあいだ、じっくり蓄えられた
新芽のうまみ・甘みを堪能したい方には、
低めの湯温をおすすめします。
お湯の温度を60〜70℃ほどまで下げ、
いつもより少し時間をかけ、ゆっくり抽出してみましょう。
苦みや渋みが抑えられ、テアニンの甘みが際立つ一杯になりますよ。
新茶の青臭さが気になる方、古茶に比べ刺激を感じやすい方に
ぜひ試していただきたい淹れ方です。
〈 保存方法と期間 〉
以前のコラムでもご紹介したとおり、
開封後は空気・光・湿気・熱を避け、冷暗所で保存してください。
ただ、新茶らしい味わいを楽しめるのは、意外と短い期間。
新茶特有のさわやかな香気は、
青葉アルコールという成分によるものですが
この成分は、時間の経過とともに揮発しやすい特性があり
せっかくの風味が徐々に薄れていってしまうのです。
ちょっぴり残念な気もしますが
「この味や香りは、旬だけのお楽しみ」と前向きにとらえ
1か月程度を目安に飲みきるのがよいかもしれません。
関連記事:日本茶をおいしく味わう保存方法のおはなし
4.終わりに

わざわざ古いお茶を勧めるなんて、
変わり者のお茶屋と思われてしまいそうですが
新茶と古茶の飲み比べができるのも、この時期だけの特権です。
普段はペットボトル派・ティーバッグ派という方も
よかったら急須を使って淹れてみてください。
きっと、お茶のイメージが変わりますよ。
コラムでは、皆さまからのささいな疑問や
テーマのリクエストを受け付けております。
お茶に関するご質問・ご相談などがありましたら
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
ステキなお茶時間をお過ごしください。