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玉露の一滴-じっくり引き出すうまみと甘みのハナシ

明治24年創業、八王子のお茶屋・網代園(あじろえん)です。

お茶のなかでも、ひときわ特別な存在として知られる高級茶・玉露(ぎょくろ)。
耳にしたことがあっても、実際に飲んだことがある方は少ないかもしれません。

この記事では、玉露がどんなお茶なのかわかりやすくご紹介し
歴史やご家庭での楽しみ方をまとめています。ご笑覧ください。

 

 

-目次-

 1. 玉露ってどんなお茶?
   ・ 日差しを避けて育つ〈 覆下栽培
   ・ 江戸の人々を魅了した玉露の〈 歴史

 2. 玉露とほかのお茶は何が違うの?
   ・ ひと口で実感する〈 濃厚なうまみ
   ・ 青海苔に似た独特の〈 覆い香

 3. 玉露の基本の淹れ方は?
   ・ 〈 低温でじっくり 〉 味わう
   ・ 〈 少量をゆっくり 〉 味わう

 4. 終わりに

 

 

 

1.玉露ってどんなお茶?

まずは、玉露の基本からみていきましょう。

  

 

〈 覆下栽培 〉

 玉露は日本茶の一種ですが、
 ほかのお茶とは栽培方法が異なることをご存じでしょうか。

 京都・宇治や福岡・八女など、玉露の生産が盛んな地域では
 一番茶収穫の約20日前から、黒いネットで茶畑を覆う光景がみられますが
 これは、寒冷紗(かんれいしゃ)という資材で、初夏の強い日差しを遮るため。

 日光が少ない環境下で育つ葉は、少しでも光を集めようと面積を広げ
 柔らかく、うまみの強い上等な葉へと成長していきます。

 抹茶の原料・碾茶(てんちゃ)生産にも用いられるこの方法は
 覆下栽培(おおいしたさいばい)と呼ばれ
 昔ながらの茶処では、藁(わら)や葦簀(よしず)を使うことも。

 この手間ひまかけた栽培こそが、玉露の深い味わいの源なのですね。

 

 

〈 歴史 〉

 玉露の起源は、江戸時代までさかのぼります。

 1738年、宇治出身の永谷宗円が初めて煎茶製法を完成させました。
 このころ、茶の湯をたしなむ武家の経済力は衰え、抹茶の需要が低迷。
 いっぽうで、文人たちを中心に、美しく澄んだ煎茶に人気が集まり始めます。

 こうした流れのなか、抹茶生産で用いていた覆下栽培を応用し
 「茶臼で挽いて抹茶にする」のではなく、「揉み茶として仕上げる」方法で
 新たに生まれた製品が、玉露です。

 清らかなうまみと透明感ある水色をもつ玉露は、時代のニーズに応え
 当時の江戸で、大きな評判を呼んだと伝えられています。

  

 

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2.玉露とほかのお茶は何が違うの?

玉露とほかのお茶には、どんな違いがあるのでしょうか。

 

 

濃厚なうまみ

 最大の特長は、濃厚でまろやかなうまみです。

 一般的な煎茶は、さっぱりとした渋みや爽やかな香りが魅力ですが
 日光を避けて育てられる玉露の葉には、光合成によって失われやすい
 うまみ成分・テアニンがたっぷり残っています。

 テアニンは、甘みやまろやかさを感じさせるだけでなく
 リラックス効果をもたらすともいわれる成分。

 とろりとした甘み、うまみがじんわり舌へ広がり、
 長く余韻が残る後味も、玉露ならではの味わいです。

 

 

覆い香

 玉露のもうひとつの魅力は、独特の香り。

 こちらも、覆下栽培という特殊な環境で育った影響によるもので
 海苔や昆布を思わせる旨みの強い香りは、覆い香(おおいか)と呼ばれています。

 玉露の香りは、淹れる温度や時間によって微妙に変化します。
 低温で抽出すると、やわらかく甘い香りが立ちますが
 高温では香ばしさが際立ち、全体の印象が引き締まります。
 飲むたびに新たな発見を楽しめるのも、玉露のおもしろいところですね。

 

 

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3.玉露の基本の淹れ方は?

玉露を扱う煎茶道では、取っ手のない宝瓶や湯冷ましなどの茶道具を使いますが
ご家庭にある急須と湯呑みでも、十分おいしく淹れることができます。

 

  

低温でじっくり

 熱湯でお茶を淹れると、どうしても苦み成分が出やすくなってしまいます。
 玉露のうまみを最大限引き立すには、50~60℃ほどの低温を使いましょう。

 たっぷりの茶葉(1人分約4〜5g)、少なめのお湯(3人分約90ml)で
 2分ほど浸出させると、濃厚な甘み・うまみを味わえます。

 2煎目以降は少し高めの湯温で、浸出時間を半分程度にすると
 5煎目くらいまで風味の変化を楽しめますよ。

 淹れ終わったあとのお茶殻は柔らかく、苦みも少ないので
 ポン酢やドレッシングで食べることもできます。ぜひお試しくださいませ。

 

 

少量をゆっくり

 玉露はうまみが濃厚なうえ、1人分の量も少なめなので
 一気に飲み込まず、舌の上で転がしながら味わうのがおすすめ。
 
 まさに「玉の露」をすするように
 一滴ずつ、じっくり堪能してみてください。

 カフェイン含有量が多いのも、玉露の特徴です。
 一般的な煎茶100mlあたり20mgに対し、玉露は100mlあたり160mg。

 妊娠中や授乳中の方、カフェインに敏感な方は、
 特に飲む量や時間帯にご注意ください。


 

  

 

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4.終わりに

初めて玉露を口にする方は
その濃厚さに驚かれるかもしれません。

けれど、慣れてくるほどその味わいがかえって興味深く
「お茶っておもしろい」と感じさせてくれる存在でもあります。

機会があれば、まずは少量からお試しください。
皆さまのご感想をうかがえることを、楽しみにしております。

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