お知らせ・コラム
茶摘み-お茶の味を決める見極めのハナシ

明治24年創業、八王子のお茶屋・網代園(あじろえん)です。
皆さま、今年の新茶はもう召し上がりましたか。
みずみずしい香りとフレッシュな味わいが魅力の一番茶。
そのおいしさを決めるのは、産地や品種だけではありません。
「茶葉をいつ摘むか」という見極めも、とても重要な要素なのです。
今回は、おいしいお茶ができあがるまでの裏側にある
茶摘みのハナシをお届けします。
-目次-
1. 新茶はいつ摘むの?
・ 新茶の味わいを左右する〈 収穫時期 〉
・ 見極めは〈 品質と収量のバランス 〉
2. どうやってお茶を収穫するの?
・ 収穫の目安は〈 出開き・葉色・新芽の状態 〉
・ 時代とともに移り変わる〈 摘採方法 〉
3. お茶摘みってどんなことが大変?
・ 新茶の天敵〈 春の遅霜 〉
・ 〈 摘採直前の雨 〉にも注意が必要
4. 終わりに
1.新茶はいつ摘むの?

以前のブログでお伝えしたとおり、その年最初に摘んだ新芽でつくる新茶は
4月中旬~5月ごろにかけて収穫・売り出しを行ないます。
ところが、このタイミングがかなりシビアなのをご存じでしょうか。
〈 収穫時期 〉
若い新芽はやわらかく、テアニンなどのうまみ成分を豊富に含みます。
しかし、太陽の光を浴びながら生長するにつれ、
葉はしっかりした質感をもち、苦みや渋みのもととなるカテキンも増加。
たった数日、収穫時期が変わるだけで
香りや口当たり、風味に変化が起こります。
新茶は、「いつ摘むか」で味が大きく変わる、とても繊細な商品なんです。
〈 品質と収量の関係 〉
新茶の時期になると、単位面積当たりの収量は
一日のあいだに7~10%増えるといわれています。
ただし、とにかく量を増やせばいいというわけではありません。
生長しすぎた葉は硬くなり、品質が低下しやすくなりますが
品質が最もよい段階は、まだ芽が小さく、収量も限られてしまいます。
収量と出来栄えのバランスを最大限引き出すためには
茶農家さんたちによる見極めの力が欠かせません。
関連記事:新茶と古茶-今しか味わえない旬のハナシ
2.どうやってお茶を収穫するの?

では、その大事な収穫タイミングをどのように判断しているのでしょうか。
〈 出開き・葉色・新芽の状態 〉
新芽の成長具合を判断する際、重要な指標になるのが
芽がどれだけ開いているかを示す出開き(でびらき)度。
芽が小さすぎても、開きすぎていてもいけないそうで
出開き度70%前後が目安とされています。
このほか、葉の色や手ざわり・茎の曲がり具合(やわらかさ)など
小さな変化を日々観察しつつ、総合的な判断から最適な収穫時期が決められます。
まさに、経験と技術が求められる工程といえるでしょう。
〈 収穫方法 〉
お茶摘みの歴史のなかで、収穫方法も大きく変化しました。
もっとも歴史の古い手法は、皆さまご存じの手摘み(てづみ)。
玉露や抹茶の材料となる碾茶など、高級な茶葉をあつかう茶園や
急斜面につくられた茶畑では、今も人の手による摘み取りが続けられています。
明治末期ごろからは、鋏摘み(はさみづみ)が普及。
古茶が混入しないよう、事前に畝(うね)の整枝などが必要ですが
摘採効率は、手摘みの約10倍まで向上したといわれています。
さらに時代が進み、農業全体の労働力不足が深刻化すると
機械を使った摘採が広がっていきました。
可搬型摘採機は、大きなバリカンのついた機械を
畝を挟んで二人がかりで支えながら使用します。
送風機能により、刈った茶葉を後方の袋へ収容できる優れもので
山間地域の多い静岡県などの茶処で主流の手法だそう。
いっぽう、平坦な茶園が多い鹿児島県などの南九州地域では
人が乗り込み収穫を行う乗用型摘採機での作業光景がよく見られます。
3.お茶摘みってどんなことが大変?

お茶づくりは、自然と向き合う大変なお仕事。
収穫のタイミングがよくても、天候で状況が一変することもありえます。
〈 春の遅霜 〉
一番やっかいとされているのが、春先に起きる遅霜(おそじも)。
収穫直前の4~5月にかけ、季節外れの霜が降りると
芽吹いたばかりの柔らかな葉が凍り、変色してしまうのです。
そのため茶園では、
・茶樹に覆いをかけて冷気を遮り、葉を保湿する被覆法
・スプリンクラーで散水、凍る際に出る熱(潜熱)で温度低下を防ぐ散水凍結法
・防霜ファンを活用し、上空の暖気と冷気を入れ替える送風法
など、地形や周辺環境に合わせた霜対策をとっています。
〈 摘採直前の雨 〉
また、摘採前の雨も、茶の仕上がりに大きく影響します。
摘採した生葉は、すぐに蒸し加工へと移されますが
葉の表面に雨(水滴)がついていると、蒸し具合にムラが出たり
蒸れ香といわれる独特の匂いが発生し、品質を低下させてしまう要因に。
この時期、日々変わる天気予報に
農家さんたちは「毎日が一喜一憂」だそう。
大変な苦労や努力に、本当に頭の下がる思いです。
4.終わりに

いつ摘むか、どんな芽を選ぶか、その日の天候はどうか。
さまざまな条件が揃ってはじめて、おいしい新茶が生まれます。
いっぷくのお茶の裏側には、自然と向き合いながら品質を追求する
農家さんたちの細かな判断と工夫が詰まっているんですね。
次にお茶を味わう際は、そんな物語にも
思いをはせていただけたら嬉しいかぎりです。
コラムでは、皆さまからのささいな疑問や
テーマのリクエストを受け付けております。
お茶に関するご質問・ご相談などがありましたら
メールフォームや下記のLINEリンクから、気軽にお寄せくださいませ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
ステキなお茶時間をお過ごしください。