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抹茶ができるまで-緑茶とは異なる栽培・製造工程のハナシ

なつめの中の抹茶を茶杓ですくう画像

明治24年創業、お茶屋の網代園(あじろえん)です。

11月は抹茶の旬ということで、
毎年抹茶に関するテーマを取り上げています。

近年、海外観光客や輸出などのニーズも高まっている抹茶。
国内でも、お菓子やスイーツとのコラボをよく見かけますが
抹茶の現物をじっくり観察したり、手で触れたりする機会は
あまり多くないように感じます。

抹茶がどのように栽培・製造されているのか
どんな特色をもつのかを知れば、さらに抹茶に愛着がわくはず。

今回は、抹茶製法にかかわるキーワードをピックアップしながら
皆さまの手元に届くまでの工程をたどっていきたいと思います。

「抹茶ってそもそもどんなお茶?」
「粉茶や粉末茶とは何が違うの?」
など、基本情報をおさらいしたいという方は
過去の関連記事をご参照くださいませ。

 

 

関連記事:身近なようで意外と知らない、抹茶のおはなし

 

 

 

-目次-

 1. 抹茶はどのように栽培するの?
   ・ 甘みを引き出す〈 覆下栽培 〉とは
   ・ あえて光を遮る理由

 2. 抹茶の原料はどのように製造するの?
   ・ 揉まないお茶〈 碾茶 〉とは
   ・ 揉んだ茶葉は〈 玉露 〉へと変身

 3. 抹茶はどのように加工するの?
   ・ お茶を挽く道具〈 茶臼 〉とは
   ・ 1ミクロンのお茶

 4. 終わりに

 

 

 

1.抹茶はどのように栽培するの?

寒冷紗ごしに透けている太陽

「抹茶って、煎茶(緑茶)を粉末にしたお茶じゃないの?」
と思っていらっしゃる方、意外と多いのではないでしょうか。

実は、栽培・製造・加工それぞれの工程で
煎茶とは異なる特別な手法がとられているんです。

 

 

〈 覆下栽培 〉

 抹茶の原料を育てる茶園では、茶樹へ覆いをかけ
 一定期間日光を遮った環境下で栽培をおこないます。
 この手法を、覆下栽培(おおいしたさいばい)といいます。

 新芽が1~2枚展開した頃から被覆を開始し
 期間は2週間から20日ほど。

 昔ながらの方式は、よしずや藁(わら)を使いますが
 最近は、高温や強い光から植物を守る化学繊維のシート
 寒冷紗(かんれいしゃ)を用いる場合も多いそうです。

 

 

〈 光を遮る理由 〉

 収穫前にわざわざ日光を遮るのは、お茶の品質を高めるため。

 光を遮られた茶の葉は、効率的に光合成をおこなうべく
 より多くの葉緑素(クロロフィル)を生成するので
 あざやかな濃緑の葉色へと成長します。

 また、抹茶がもつ上品な甘さも、この栽培方法のおかげ。
 甘み・うまみ成分のテアニンは、光合成が進むにつれ
 苦み・渋み成分のカテキンへ変化する特性がありますが
 遮光によって、この変化を抑制することができるのです。

 甘みが強く苦みの少ない、抹茶向きのお茶っぱができるのは
 茶農家たちの手間ひまをかけた努力の賜物ですね。

 

 

関連記事:お茶摘みのおはなし
     日本茶の栄養素と健康効果のおはなし

 

 

 

2.抹茶の原料はどのように製造するの?

碾茶

続いて、抹茶の原料をつくる工程をみていきましょう。

 

 

〈 碾茶 〉

 碾茶(てんちゃ)とは、抹茶の原料となるお茶のこと。
 碾は、「臼(うす)」「挽く(ひく)」などの意味をもつ漢字で
 抹茶を臼で挽き抹茶にする前の、茶葉の状態をさします。

 収穫した葉を蒸し、乾燥させて碾茶をつくりますが
 最終的に細かい粒子状にするため、他のお茶とは異なり
 揉んで形を整えるという工程がありません

 茎や葉脈を取り除き、加工しやすいよう5mm程度に切断された葉は
 平べったく、青のりのような見た目をしています。

 

 
〈 玉露 〉

 玉露(ぎょくろ)は、濃厚なうまみが魅力の高級茶。
 実はこちらも、覆下栽培で育つ茶葉を原料としています。

 揉まない碾茶とは対照的に、針状に細く尖った外形が特徴で
 光沢と香味がしっかりと出るよう、細心の注意を払いながら
 よく揉み込んだあとに乾燥工程へとうつされます。

 京都の宇治、愛知の西尾、福岡の八女(やめ)など
 良質な抹茶をつくる茶処が、玉露の産地としても知られているのは
 こうした関連性があるからなんですね。

 

 

関連記事:茶の製造工程のおはなし

 

 

 

3.抹茶はどのように加工するの?

抹茶を挽いている茶臼

最後に、仕上げ工程をご紹介します。

 
 

茶臼

 茶臼(ちゃうす)は、茶葉を挽いて抹茶をつくるのに用いる石臼のこと。
 手挽き臼と機械臼の二種類があります。

 抹茶づくりで特に重要なポイントが、温度管理
 摩擦熱が高くなりすぎると、抹茶の色や香り・風味を損なうため
 臼をゆっくりと、一定の速度で回転させなければいけません。
 1台の茶臼で挽ける量は、1時間あたりわずか40gといわれています。

 

 

〈 1ミクロンのお茶 〉

 茶臼を使い丁寧に挽かれた碾茶は
 ムラのない、細かな微粒子へ生まれ変わり
 抹茶の滑らかな口当たりと、まろやかな味わいを実現します。

 小麦粉が30~60ミクロン、
 一般的な粉末茶が20~50ミクロンなのに対し、
 上質な抹茶の粒径は1~5ミクロンにもなるそうですから
 いかに繊細な粒子であるか、わかっていただけるかと思います。

 ※1ミクロン(μ)=1000分の1ミリメートル(mm)

 

 

4.終わりに

抹茶が入った抹茶碗を持っている女性の手

意外と知らないお抹茶のハナシ、
ちょっとした発見があったら嬉しいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
ステキなお茶時間をお過ごしください。